子供たちには「あそび」が足りない?

From:宮城 奈津子

1985年をピークに、こどもの運動能力は低下傾向にあります。最新の研究では、幼少期の運動経験が、大人の健康にも影響が出るというデータも発表されました。

本来子どもは、遊びを通して運動能力を自然と身につけていきますが、現在は子どもの生活から「遊び時間 」「遊び空間」「遊び仲間」という「3つの間」が消失してしまい、体を使って遊ぶ時間が著しく減っている状況です。

 

3つの間が消えた現代の子供たち

 

かつては年齢の異なる子どもたちが集まって屋外で元気に遊んでいたのですが、都市化により、子どもたちが自由に遊べる空き地や生活環境が減ったことから、遊びの形が変わり始めました。

遊び仲間が減ったことで、ゲームやYouTube、スマホなどのアプリなどで、室内遊びの時間が増えたことも要因となり、子どもたちが思い切り体を動かして遊ぶ機会はどんどん減ってきているのです。

幼少期に、必要な動きの習得をしていないと、自分の身を守るため、安全かつ効果的な日常動作がうまくできず、大ケガをしやすくなるというリスクがあります。

また、体力の向上に必要な運動強度や運動量を確保しにくくなり、幼稚園、小学校に進学しても、運動が習慣化しにくいという研究結果がでています。

 

人間が成長する中で、その時々に適切な運動が習得できていないと、長期的には壮年期や中年期の生活習慣病、高齢期の転倒や寝たきりにつながるリスクも高めます。

生涯にわたって健康を維持するためにも、幼少期に基本的な動きを十分に習得しておくことが望まれるのです。

 

運動能力低下→体育指導を導入は逆効果?!

 

全国の保育園、幼稚園の先生は、そんな幼児期の運動について、国や行政からより積極的に運動する機会を作るよう指摘されました。すると、多くの園が「体育指導を導入しよう!」と体操やバレエ、サッカーやドッジボールなど、専門の種目を導入したのです。

一見、運動環境を作って、改善できたかと思ったのですが、驚きの研究結果がでました。それは、専門的指導を取り入れている園よりも、遊びの時間を増やした園のほうが、運動能力が高くなるという結果です。

 

では、なぜ運動環境を作った園のこどもたちが、運動能力を身につけられなかったのでしょうか。

それは、「遊び」という概念がないからです。

 

専門的な指導は、機能的な効果はあるかもしれません。しかし、幼児期に必要な運動条件というのは、「遊びの中で年齢に必要な運動能力を身につける」ことなのです。

脳科学の観点からも、子供が遊びに夢中になったり、興味のあることにおいては、「受容体」という成分がたくさん作られます。そんな受容体が多い状態の脳は、すぐに能力を吸収するという特性を持っています。

 

例えば、いやいややらせれている体操などは、子供達の遊びの感覚や、ワクワク感、興味を掻き立てられるような動きではないため、脳内の「受容体」が分泌されません。

なので、どんなに体操などの専門的な動きを身につけさせようとしても、実際の子供達の能力が上がらないという事がわかったのです。

 

あなたの園でも思い当たりませんか?

  • 運動指導を入れているのに、子供たちのケガが多い
  • 運動指導を入れているのに、転んだときに手を付けない子が多い
  • 運動指導を入れていても、出来る子は楽しくて、できない子は消極的

 

良かれと思って導入した「体育指導」が、皮肉にも逆効果になっていたとしたら、本当にもったいないですよね。

 

現代の幼児体育には「あそび」の要素が足りない!

 

そんな中、園に求められるのは、「子たちが遊びの中で、年齢に必要な運動能力を身につけられる環境」を作っていく事です。

私たちは、そんな幼児期の発育発達に特化し、機能的にも、精神的にも良いとされる「運動あそび」の重要性に気がつき、そのプログラムを、全国の保育園・こども園・幼稚園に普及する活動を行っております。

 

遊びの要素を主軸に、機能的な運動を自然と身につけることで、子供達は楽しみながらその年齢に必要な動きを習得する事ができるのです。

 

幼児期の運動は、出来る出来ないではなく、より重要視すべきは「遊びの要素」です。

ぜひ、この機会に、あなたの園でも遊びの要素を主軸に作られた「運動あそび」を取り入れてみてはいかがでしょうか?

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